SKiCCO REPORT

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アイドルの趨勢は首都圏300人のアイドルファンが決める

結論から先に言えば、アイドルが売れるか売れないかは首都圏でアイドルファン300人を捕らえられるかどうかで決まると言っていい。「首都圏アイドルファン300人説」だ。
何人かの知り合いにはすでに現場で何年も前から話していたが、あらためてまとめておこうと思う。


「首都圏アイドルファン300人説」
元々は、古くから言われている「アイドルファン3万人説」にインスパイアされている。全国には3万人の(広義の)アイドルファンがいる、と。少子化の今でもこの数字自体はそんなに変わってない気がする。
しかし、例えばこれからアイドルを売り出そうというときに、全国津々浦々にちらばっている3万人にアピールするのは至難の業である。マスメディアを使えれば使えばよいが、今やハロプロですら全国ネットのゴールデンタイムに出演するのは難しい。インターネットは普及しているものの、インターネットが情報を受け取る側が情報を探すときには強力なツールとなるが、情報を発信する側が、それも特定の層をピンポイントに狙うのは難しい。もちろんヤフーのトップにでも載せてもらえれば話は早いが、それができるというのならここから下は読まなくて良い。
マスメディアも使えず、ページビューのあるサイトにも載せてもらえない、そんなときはどうすればよいか。それはもう現場でファンをつかむしかない。
手段はいろいろだ。無料のインストアライブたくさんやってもいいだろうと思う。ライブハウスに出るのもいいだろう。しかしとにかく現場で熱心なファン300人集められるだけの力をつけるのが先決だ。それができないうちに「次の手」をうっても徒労に終わる可能性が高い。念のために言っておくと、CDとかが300枚売れる、という意味ではない。ファンの実数で300人である。


今までたくさんのアイドルさんたちを現場で見てきた。同時に売り出す側の人々も見てきた。
売り出す側のスタッフの中には、とにかく自信満々な人がいる。それは女のコの素質だったり楽曲のクオリティだったり今まで自分たちがしてきた苦労に裏打ちされているのだろう。しかし自信をつけるのはファン300人集まってからにしたほうが良い。中には「キモヲタどもがよってきているから一般客が集まらないんだ」と考えてヲタ排除を試みるスタッフとかもいるが、本末転倒だ。


よく考えていただきたい。


メディアにも出てない何の知名度も実績も無いアイドルに最初に群がるのは、アイドルファンに決まっている。しかもそういう連中というのは、自分のセンスでアイドルを見分け、判断し、行動できる、もっとも先進的なファンなのだ。彼らを夢中にさせることができないで、元々アイドルに興味の無い一般人に振り向いてもらおうというは虫が良すぎるというものだ。とはいえ、いかにもヲタ向けにお膳立てしてしまうと外部から入りにくくなるのも事実。


だから、これから売り出そうなんて時は、ヲタとか一般人とか区別している場合ではないのだ。とにかく一人でもたくさんの人に存在をアピールする、ヲタにも一般人でも分け隔てなく、である。
「ヲタにも一般人でも分け隔てなく」と言った直後になんだが、実際に現場に集まるのは、やはり先進的なアイドルファンであろう。彼らはマスメディアより自分の感覚を信じている。そして現場に足を運ぶ実行力もある。そういうファンを、首都圏で300人集められれば、勝機はある。


なぜ首都圏で300人と言うか。私が首都圏しか知らないからそう言ってるのだが、一般論としても、あらゆる人やモノが集中してる首都圏を狙うのは定石だろう。
人が多ければアイドルファンも多い。先進的なアイドルファンは、独自の情報網をもっている。言ってみれば天然のソーシャルネットワークだ。誰がどこでどうつながってるかは誰一人把握してないが、確実に存在している。そういう情報の発信元であったり、常に情報に敏感な先進的なアイドルファンを最初に100人捕まえられたとすれば、それほど先進的でないアイドルファンには「先進的なアイドルファンが集まってるアツい現場」と認識され注目を集め、芋づる式にファンが集まる。


そして大事なのは、その間決してつかんだファンを飽きさせてはいけないということだ。先進的なアイドルファンは先進的であるがゆえに常に新しい現場を求めている。その彼らを釘付けにする魅力を持ち続けなければならない。そして同時にヲタにも一般人でも分け隔てなく存在をアピールしていかなければならない。目の前のファンのこと「だけ」しか考えられなくなると、ただの仲良しごっこになってしまうからだ。


整理しよう。
まず先進的なアイドルファンを100人獲得する。これはもうみんな熱心なファンだ。これだけでも十分ハードルが高いが、そこで我慢してさらに活動を続ければ、最初の100人が次の200人を連れてきてくれる。そのためには、「敷居は低く、天井は高く」しておくことも大切だ。新規は入りやすいが、一度入ったらハマりやすいようにしておくこと。ここで目先の金に目がくらんで敷居を高くしてしまうと元の木阿弥である。とにかく最初の300人が集まるまでは目先の金に縛られないことが重要だ。
そうして、熱心なファンが300人集まったら、ようやく売り手側の腕の見せ所である。アイドルを生かすも殺すもスタッフ次第だ。
実のところ、この段階で失敗しているスタッフが多い。ひょっとしたら300人では足りないのかもしれない。でも、最初の300人も集められないうちに、目の前の300人を夢中にさせることができないのでは、メディアを通じてのアピールとか届くわけが無いのだ。


「首都圏アイドルファン300人説」とは、アイドルを売り出す際にまずアピールすべきアイドルファンが首都圏に300人いる、ということだ。300人という数字は、私がいろいろな現場をまわって感じた体感の数字だ。そしてその300人というのは、先進的であるがゆえに常に流動的で、「300人のリスト」みたいなのはこの世のどこにも存在しない。だが先進的な彼らは、新しい旗が上がればまずそこへ駆けつける。そういうものだ。