SKiCCO REPORT

アイドル・ガールズエンタテインメントについて書いていきます。ご連絡は mail at skicco.net までお願いします。

愛は奇跡を信じる力よ

俺は最初AKB48を観て川浜高校ラグビー部みたいになるかと楽しみにしていた。実績も経験もないまったく無名のメンバーたちが、公演の中から健全な人気を培い、全国区に羽ばたいていく、そうなったら素晴らしいと思った。
だが実際はPL学園的なプロ野球選手の育成所みたいになった*1。元々アイドル育成プロジェクトなんだからそれは間違いではないが。


AKB48」というグループを強くするために、有望なコらを集めるだけ集めまくってフルイにかける。アイドル界では一番オーソドックスな方法だが、AKB48はそうではないやり方をしてくれるんじゃないかと期待した。あの20人による、目の前の光景を疑いたくなるほど素晴らしい公演に、アイドル界のセオリーを変えるほどの奇跡を信じたかった。たとえプロデューサーや広告代理店の名前が何であろうと。


ラグビーの基本精神「One for all All for one」の言葉どおり、一人のヒーローだけではラグビーは勝てない。
ラグビーを愛しつつ先輩にビビって腐ったパン食わされそうになったり留年して逆ギレしたりする森田。
川浜一のワルと恐れられても心は孤独だった母想いの大木。
技術も体力も無く万にひとつもレギュラーにはなれそうにないがそれでもラグビーを愛し続けたイソップ
タックルにおびえて一度は退部するも勇気をふりしぼって再度挑戦する内田弟。
いろんな部員がいた。その彼らが花園を目指して、楕円形でどこに転がるかわからないひとつのボールを追い続けた。
一方で川浜高校ラグビー部は現実的な部分もあった。
「負けて悔いが残らないわけないんですよ」
「勝たなきゃだめなんです」
生徒を、ラグビーを愛するがゆえの賢治の言葉だ。エンジョイラグビーを主張するマークとは対立せず飴とムチを分担していた。


AKB48にもいろんなコがいて、多様性という点では似てるところがあるなと感じたのだ。ミュージカル経験者、ライブインマジックサンストリート亀戸で歌ってたコ、大手事務所のオーディションに落ちたコ、司会者やイベコン、以前も大人数グループに所属してたコ。様々なコがひとつの公演を創りあげている。俺の目の前で。それも、やらされてる感が一切なかった。


今まで俺が出会ってきたアイドルたちの中には、既存の常識やギョーカイのセオリーをふっとばして、アイドル界全体を変えてくれるんじゃないかと感じさせるグループがあった。そして、AKB48こそが、今度こそそれを実現してくれるんじゃないかと思ったのだ。


だが、AKB48は極めて現実的なアイドルグループになった。あたかもプロ野球選手を輩出する高校野球の名門のように。そこには、森田や大木やイソップや内田弟のようなメンバーの居場所はないのだろう。


AKB48が、俺が出会ったときのまま人気者を目指していれば、アイドル界は変わっていただろうとは今だに考える。

*1:と言いつつ高校野球プロ野球もあんま詳しくないので例えが悪かったら申し訳ない