SKiCCO REPORT

アイドル・ガールズエンタテインメントについて書いていきます。ご連絡は mail at skicco.net までお願いします。

Dorothy Little Happy(ドロシーリトルハッピー)ニューアルバム「STARTING OVER」に見るトータルアルバム論


アイドルがなかなかCDアルバムを出せない時期というのが長く続き、シングルを出すことはできても、アルバムをー商品としてー出すことは難しい、と判断されていました。テン年代に入り、ようやくアイドルのアルバムを、商品としても作品としても、出すことができるようになってきたかと感じます。
そうした中で発売されたDorothy Little Happy(ドロシーリトルハッピー)のニューアルバム「STARTING OVER」は、おそらくテン年代を代表するアイドルアルバムの一枚になるであろうという作品でありました。特筆すべきは、本作がアルバムオリエンテッドな作風を感じさせるトータルアルバムになっているだということです。


かなり以前というか'80年代の話になりますが、あるレコード会社のスタッフがインタビューで「アイドルのアルバムにおいてトータルアルバムを作るのは極めて難しい」という意味の回答をしてるのを読んだことがあります。それは、やはり多くの人の耳に残っているシングル曲を収録しておかないと、商品として成立しづらい、という意味であったかと記憶しています。
実際、そこのレコード会社に限らず、アイドルのアルバムでは、その時期その時期のアイドルの活動を反映したような作品集、ベストアルバム的な要素が含まれていることが多いです。
それが決して悪いと言っているわけではありません。そもそもアイドル楽曲の最も大きな魅力の一つは、そのアイドルを最も魅力的にするために創作された点にあります。つまりそのアイドルの存在自体が同時に楽曲のコンセプトでもあるのだから、それを最大限活かすアルバムであれば、作品集的でもベストアルバム的でも良い、ということです。
また、音楽を聴く環境の変化もあります。CDが曲スキップやランダム再生を可能にし、MDでは自分好みのプレイリストを作ることがでるようになり、今は圧縮ファイルでライブラリごと持ち運べる時代です。音楽配信ではアルバム曲のバラ売りというか“バラ買い”も可能になりました。1時間前後の一つのアルバムを作品として聴く、というスタイルは、主流でなくなりつつあります。


そういう2014年にリリースされた「STARTING OVER」は、極めてアルバムオリエンテッドな作品で、強く深く感動しました。
1曲目「COLD BLUE」でガツンとやられるところから幕を開けるあたりはいい意味で裏切られた感ありましたし、そこから曲の流れもとても……丁寧、と言うのが一番近いでしょうか、メンバー、スタッフ一丸となった気合のようなものを感じます。特に、既発曲である「どこか連れていって」から最後の曲「明日は晴れるよ」までとてもドラマティックと言うか、ちょっとここのところ言葉で説明するのは難しいのですが、一気に聴き終えて、そのあと「すげえ〜」とつい口にしてしまうような、一枚を通じて圧倒的な完成度になっています。
ちなみに、本作は約53分ですが、アナログ世代はこれをA面B面に分けて考えてみるのも一興かもしれません。曲数で区切れば6曲ずつになるのですが時間で区切るとちょうど「ストーリー」が中間になります。この「ストーリー」をA面にするかB面にするかでまた聴こえてくる表情も違うかもしれません。ちなみに私は「ストーリー」がフェードアウトで終わることもあり、「どこか連れていって」をB面1曲目にしたいです。
あとどうしても言いたいんですが、タイトルチューン「STARTING OVER」がとても素晴らしくて私の大好きな曲だということです。ドロシー節と言っていいのでしょうか。ついつい「泣ける」とか言ってしまいます。心の中で感動して泣くんですよ。まあライヴとはではわりとマジ泣きする事もありますが。


ドロシーやアイドルに限らず、今後、アルバムという発表形態が続くのか、終わってしまうのか、それはわかりません。そういう時代に、この作品に出会えた事をとても嬉しく思い、感謝しています。みなさんにもぜひ1曲目からぶっ通しで聴いていただきたい一枚です。


【関連記事】
Dorothy Little Happy(ドロシーリトルハッピー)メンバーがブログに綴ったニューアルバム「STARTING OVER」への情熱 - SKiCCO REPORT
全アイドルファン必聴の超強力盤!JK21珠玉の名曲集「Lucky Tripper 〜それぞれの夏〜」 - SKiCCO REPORT
真野恵里菜3rdアルバム「More Friends Over」は'10年代に燦然と輝くアイドルの教典 - SKiCCO REPORT
東京女子流2ndアルバム「Limited addiction」 - SKiCCO REPORT
2011年はアイドルアルバム豊作の年 - SKiCCO REPORT