SKiCCO REPORT

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若者を追いつめるのが尊いという風潮

連日暑い日が続きますが、とあるアイドルが、日中の屋外イヴェントで体調を崩して倒れたという話を耳にしました。私はその現場にいたわけではないので真偽は定かではないですが、十分ありえる事だったですし、今後もあるのではないかと心配しております。
もちろん、スタッフの側も細心の注意は払っているとは思います(なにせ、大事な“商品”ですから……)。とはいえ、アイドルは言うまでもなく生身の人間、それも多くは成長期の大切な時期です。彼女らの長い人生を考えれば、無理は禁物です。しかし、往々にして、アイドルに無理をさせている現状を尊いものとして扱う風潮があるように感じます。


稼ぎ時のリリースイヴェントや握手会、コンサートなどでは、たとえ体調不良でも無理をして参加している事が多いようです。リリース時期は稼ぎ時であると同時に、メディア露出など様々なスケジュールが入り組んでいます。そのため、それらに影響を与えないために無理をさせていると考えられます。コンサートや握手会では、欠席ということになれば払い戻しの可能性もあるため、無理をさせてでも参加させているのでしょう。AKB48等の握手会では毎回のように体調不良で中止になるケースが発生し、そのたびに振替握手会が行われてますが、その振替握手会を実施するために後日のスケジュールがさらに過密になり、メンバーの負担が増えるという悪循環になっています。コンサートなどで倒れるまでステージに上がっていたという話なども、スタッフの過失を問う声は少なく、概ね美談として喧伝されています。破滅系アーティストが自分の判断でやってるのならまだしも、過密スケジュールゆえの無理など、スタッフのマネジメント能力に疑問を持たざるを得ません。
「体調管理も仕事のうちだ」
「一度引き受けた仕事は何があってもやり遂げるのが責任だ」
それはその通りです。しかしあくまで生身の人間、どうにもならないときだってあります。ましてアイドルは代わりのいない仕事です。万全の状態で仕事に挑むことこそ、本当に意味で責任を果たすと言えるのではないでしょうか。
最近では、Dorothy Little Happy(ドロシーリトルハッピー)はシングルのリリース週にメインヴォーカルが体調不良で欠席し、1週間は4人だけでリリースイヴェントを行ってました。東京女子流はやはりリリースイヴェント前にメンバーの一人が怪我をして、しばらく4人で活動していた時期があります。ドロシーや女子流のこうした判断は素晴らしいと思いました。しかしこういう決断ができるのはまだ少数派のようです。


若い人にさせるべきでない無理をさせ、苦しませ、労苦を乗り越えた事を美談とする風潮、そうした世間の“空気”に、社会的立場の弱い若い人はしなくていい苦労を強いられ、いい大人がそれをエンタメとして消費する。あまりいい趣味とは言えません。
思えば夏の高校野球も、炎天下で若者に“全力”を強い、それをクーラーの効いた部屋で大人が鑑賞するということが全国的に行われています。運動部における“シゴキ”や、相撲の“かわいがり”も、集団暴行にも関わらず美化する向きさえあります。あるいは会社における“上司より先に帰ってはいけない”や“台風でも地震でも出社しろ”という思考停止も、(無駄な)苦労を美化する風潮の産物かもしれません。
若い時の苦労は買ってでもしろと言いますが、それは買う価値があるかどうかしっかり見極めるべきでしょう。買わなくていい苦労はただの無駄どころか有害ですらあります。


アイドルに話を戻せば、この夏も屋外で様々なイヴェントが催されます。スタッフはもちろん、イヴェント主催者も時には大きな決断をし、出演者に無理のない進行をする必要があるのではないでしょうか。ビジネス上の判断でステージを強行し、アイドルたちが倒れてしまっては、何のためのイヴェントかわからなくなってしまいます。
この夏のイヴェントが、アイドルにもファンにも素敵な思い出となるよう祈っております。


<関連>
苦労というコンテンツ - SKiCCO JOURNAL http://d.hatena.ne.jp/skicco/20120304/p1