SKiCCO REPORT

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訥言敏行東京女子流

本来「裏方」であるアイドルのスタッフが、告知や案内以外の事を「個」として発言するようになって、どれほど経つだろうか。
ほとんどの場合、悪気はないのだろうが、いわゆる「ネタバレ」に類するような発言が見られることもあり、興醒めになることも無いわけではない。
「今度の新曲のコンセプトはああでこうで」
「この歌詞の意味はこれこれこうで元ネタはこれです」
「新衣装のデザイン意味わかりましたぁ?あれは(ry」
「今度のPVの監督はあの有名な◯◯さんで彼の世界観を(ry」
「アイドルって普通云々カンヌンだが、ウチはそこいらのアイドルとは違う(キリッ」
確かに、ファンはそういう情報は知りたがる。だが、肝心の作品やステージを観る前に、我々の目や耳や心に届く前に、そんな説明を山ほどされてもと思う。手品を見る前にタネを見せられて、手品が成立するだろうか。客にタネを知りたいと言われてあっさり教える手品師に、次の仕事があるだろうか。
誤解を恐れずに言えば、最近のスタッフはおしゃべりがすぎるのだ。


そんな昨今、多くを語らず、アイドル戦国時代をスマートに駆け抜けているのが、東京女子流とそのスタッフだ。その様はまさに「訥言敏行」と言っていい。


訥言敏行の意味 - 四字熟語辞典 - goo辞書

とつげん-びんこう【訥言敏行】
訥言敏行 意味
徳のある人は、口数は少なく、行動に敏速であるものだということ。


白状するが、最初に東京女子流のことを知ったときは、全く期待してなかった。時代遅れのティーザーサイト、形式だけの年齢非公開、シャレオツなアー写。そして手がけるのはアイドルとは相性の悪いエイベックス。当時は私が新潟にいたこともあり、恥ずかしながら自分で確認する前に「たいしたことないだろう」という先入観を持ってしまっていた。


だが、東京女子流とそのスタッフたちは、言葉で飾り立てるより行動で道を示した。地味であっても確実に、実績と経験を重ねていった。やってること一つひとつはありふれたことでも、それを着実に重ね、点を繋げ線としていった。それが、私のような不心得者を含め、多くの人達の心を揺さぶっていく。
年齢非公開なのも、ローティンだからという偏見に惑わされずに評価して欲しかったから、評価される自信があったからではないかと思われる。
定期ライヴ、様々なUSTREAM配信、珠玉の楽曲群。メンバーたちの絶え間ない努力はもちろんだが、その努力が無駄にならぬように、彼女たちがきちんと光り輝けるように、スタッフは大言壮語せず縁の下の力持ちに徹していた。


その甲斐あって、東京女子流は、今やアイドルシーンでは揺るぎない、そして数字だけでは判断できないプレゼンスを獲得した。奇をてらわず、しかし何にも似てない。未知の地平を自ら切り開き、他の追随を許さない。女子流の前に女子流無し、女子流の後に女子流無し、とか言いたくなる。


非常に興味深いのは、東京女子流は「ガールズ・ダンス&ボーカルグループ」と名乗っていることだ。自らアイドルを名乗る機会はほとんど無い。
だからといって、かつての“アーティスト病”のようにお高く止まってるのかと言えば、そうではない。リリースイヴェントでは握手会だってがっつりやってるし、NHKMUSIC JAPAN」のアイドル特集には、ももいろクローバー(当時)やスマイレージらと共演し、女子流音頭(正式名称わからなかった)を披露した。同様の顔ぶれで雑誌の特集などにも度々登場。「TOKYO IDOL FESTIVAL」等アイドルが集結するイヴェントにも何度も出演している。
何より、定期ライヴのセットリストや衣装、「あぁさんぽ」や「ひとみのひとみぼっち」などの個人メンバーのUSTREAMなど、いちいちアイドルファンのツボをついてくる。
アイドル戦国時代に浮かれてる雨後のタケノコ連中を横目に、アイドルとは名乗らず、だが決して否定もせず、しっかり「アイドル」であり続ける。


メンバーのアイドル的魅力を全面に押し出し遺憾なく発揮させ、かつ、メディアなど心無い人達の色眼鏡に屈しないためにも、自らはアイドルだともアイドルでないとも言わない。
冷静で現実的な対応だ。クレバーと言ってもいい。
これはスタッフに相当な策士がいるなと思ってたら、こんなツイートが流れてきた。



これは、毎週水曜日に行われているUST番組「ひとみのひとみぼっち」終了後に発せられたものだ。「ひとみのひとみぼっち」は、始まってあっという間に大人気企画になった。この番組の圧倒的な魅力を表す言葉が見つからないのがもどかしいが、配信開始直後の、ものすごい勢いで増える視聴者数を見てると、どれだけみんな毎週楽しみにしているかがわかる。中毒性すら感じさせる、ファンの心をワシづかみにして離さない内容なのだ。



もちろんスタッフはそのつもりでやってる。だが彼らは決してドヤ顔ツイートをせず、ギョーカイ人にありがちな自己顕示欲をギリギリのところで抑えてるのがこのツイートからも伝わってくる。こういうところでドヤ顔して得意になってるアイドルスタッフはめずらしくないが、それをしないのが女子流のスタッフなのだ。
だからこそ我々は、来週の「ひとみのひとみぼっち」が、これからの東京女子流が、楽しみになるのだ。ワクワクするではないか。


言葉で説明しなきゃ伝わらないなら、なんのための彼女たちは存在するのか。何のために作品を世に出しているのか。
作品を手がけた人が、企画を考えた人が、力説したいのは人情かもしれない。だが、主役は他ならぬアイドルたちなのだ。
アイドルのスタッフは「訥言敏行」の精神で、縁の下の力持ちとしてアイドルたちを支え、彼女たちを輝かせて欲しい。


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