SKiCCO REPORT

アイドル・ガールズエンタテインメントについて書いていきます。ご連絡は mail at skicco.net までお願いします。

2011年はアイドルアルバム豊作の年

こういうのを豊作といっていいのかどうかよくわからないが、とにかく、2011年はアイドルのアルバムがたくさん出た。
少し前までは、そもそもアルバム発売までこぎつけられない状況だった。出せたとしても、だいたいは、たぶんこれが最後だろうなあ的なスティーロ醸し出した、(ビジネス的にも)総仕上げ的ベストのようなアルバムで、そしてそれすら出せないアイドルのほうが多かった。AKB48ですら、今年になってはじめてオリジナルアルバムを出した。それほど、アイドルがアルバムを「商品」として出すのは、難しい。
だが、今年は、未来を感じさせると言うか、キャリアの通過点とか、マイルストーンとか、あるいは第一歩と言えるようなアルバムをたくさんのアイドルが出してくれた。◯◯というアイドルを語る際に、これを聴けばいい!と言える作品があるのは、後年振り返る時にも話題にしやすい。そういう意味でも感慨深い。
マーケットにおいては音楽配信への移行は確実に進んでおり、街角から「CD」が消え去るのも時間の問題かもしれない。“アルバム”という発表形態自体が、蓄音機以来の物理媒体に縛られたがゆえの産物であるならば、もうその概念すらなくなってしまうかもしれない。また、「オタクが何百枚も買ってるだけ」という批判も尽きない。それでも、こうして2011年に、パッケージとしてアルバムCDを発売したアイドルがたくさんいた、そしてどれも素晴らしかったことは、特筆していいだろう。




「デモサヨナラ」Dorothy Little Happy (2011/3/16)



仙台を拠点とし、東北地方を中心に活動する彼女らのメジャーデビューミニアルバム。日付を見ても分かる通り、東日本大震災発生の直後に発売された。そのため、キャンペーンはおろか、当初は彼女らの安否も心配されたほどだ。その彼女らは、今年大きく飛躍し、アイドルに地理条件など関係ないことを知らしめた。エイベックスとはいえバックアップらしいバックアップも無い中、メンバーの地味でも着実な積み重ねと、ファンの口コミで、今年最も勢いを感じさせるアイドルとなった。超満員となった東京でのライヴでの、「ドロシーリトルハッピーを見つけてくれてありがとうございます!」という佳奈の言葉が今も胸に残る。なんちゃらマネーだとかミエナイチカラだとかの虚飾でない、彼女たち自身の手でつかんだファンの心だから、そう簡単には離れまい。彼女たちがDorothy Little Happyでいる限り、勢いが止まる理由がないのだ。来年1月11日には、新録曲を加えた「デモサヨナラ2012」も発売される。2011年にドロシーを見つけた我々にとって、2012年の彼女たちこそ見逃せない存在になる。





「さくら学院 2010年度 〜message〜」さくら学院 (2011/4/27)



唯一無二のノーブル系アイドルとしての地位を築いたさくら学院のアルバム。このご時世に物販なしというスパルタンなスタイルは自信の現れだろうし、それがスタッフのカン違いでないことは、ライブの動員が証明している。キチンとやることをやれば、キチンと見せれば、接触商売なんか不要であると。私のような賎民からすると、ちょっと高貴すぎて近寄りがたいところもなくはないというか、あまりにまぶしすぎてイヴェの帰り道に泣いたこともある(実話)。だがそこがいい。とか言ってたら、無能で名高いユニバーサルに移籍したらしい。今後の展開が実に不安ではあるが移籍してしまったものはしょうがない。スタッフはさくら学院の名を汚さぬよう、怒り狂う民(ファン)にギロチンにかけられないよう、努力して欲しい。





「鼓動の秘密」東京女子流 (2011/5/4)



2011年は女子流イヤーだったと言っていいだろう。過去記事を参照してほしい。
(「訥言敏行東京女子流」「東京女子流は全アイドルファンへの挑戦であり我々はそれを受けるべき」「アイドルという時代の針を自ら進めるのは東京女子流」)
その東京女子流は、このアルバムで「一区切り」つけ、次の段階に移ったと思わせてる。それは、スタッフがカン違いしたときにありがちな「豹変」とかではなく、正常で着実な進み方だ。もとより楽曲のクオリティには定評のある東京女子流。本作は、まさにこの2011年に、我々が知る「東京女子流」が存在したことを記す“歴史的名盤”になるだろう。





「バトル アンド ロマンス」ももいろクローバーZ (2011/7/27)



ももいろクローバーが大きく飛躍した2010年、その勢いのまま2011年も駆け抜けるかとおもいきや、グループ存亡の危機とも言える大事件を乗り越えて、名前も新たにリリースしたのが本作だ。ファンにはお馴染みの曲も多数収録されているが、アルバム全体は過去ではなく未来を向いている。“ポストAKB”という安直な表現は使いたくないし、事実方向は違うのだが、アイドルのことをよくわからい人にも手に取ってもらえるパワーとクオリティが本作にはある。アイドルはAKBだけではない、ももいろクローバーZここにありと、“天下”に知らしめる一作だ。





「JK21やねん」JK21 (2011/12/14)



私がJK21を現場で見たのは、ちょうど一年前くらい。大阪を拠点とする彼女らが、メジャーデビューシングルのキャンペーンを東京で行ったので行ったのだった。無銭キメた。だが一年後には、部屋にJK21のCDが何枚も積んである状態になった。それほど魅力的だと言いたいのだが、伝わってるだろうか。昨今の地方アイドルムーブメントの中で語られることが多いJK21だが、私は今のところJK21が東京に来たときしか現場に行ってない。それでも楽しい。この感覚は、私が地方に住んでた学生の頃、東京から来るアイドルを楽しみにしてたのとそっくりなのだ。だからまるで違和感がない。アトリエにも行ってない奴がJK21語るなと怒られそうだが、そういう楽しみ方も可能な、言わば“全国区クオリティ”なのがJK21だと思ってる。ステージといい楽曲といい、私の中では地方アイドルだからどうこうという色メガネもゲタも存在しない。ただ好きなのだ。彼女らのステージが楽しいし、毎日(本当に毎日)曲を聴いている。ドロシーともども、もう東京も地方も関係ないと証明してくれるのが、本作のクオリティだ。
(関連過去記事「地方アイドルの勃興が示すパラダイムシフト」)



本エントリでは紹介してない作品も、もちろんたくさんある。
書いててあらためて気づいたが、ハロプロ制服向上委員会は、コンスタントにオリジナルアルバムを出し続けている。両陣営とも一時期は元気がなかったというか、SKiは昨年「再始動」したわけだけど、来年に向けて元気を取り戻しつつあるようでなによりである。
今後も良作がリリースされることで、より多くの人にアイドルの魅力、楽しさが伝わりますように。