SKiCCO REPORT

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地方アイドルの勃興が示すパラダイムシフト

アイドルブームと呼ばれる昨今であるが、さながら今は第二次地方アイドルブームと言えるような状況である。しかも、これまでの地方アイドルたちと異なり、地方での活動を軸にしつつ、全国展開を睨むといったアイドルが続々と勃興している。


景気動向が地方に波及するのに時間がかかるように、アイドルブームもやや遅れて地方に波及する。
前回は、モーニング娘。のブレイクにあやかって全国各地にご当地アイドルが誕生した。BBRK有限会社ライブバージョンが牽引した前回のムーブメントでは、山形のSHIPが様々なメディアで取り上げられた。また現在まで活動を続ける新潟のNegiccoもこの頃結成された。


そして、AKB48の成功が呼び水となり、ふたたび地方アイドルが続々と誕生している。昨今の地方アイドルムーブメントが前回と違うのは、地方に拠点をおいたまま、全国への「進出」を試みて、それが成功しつつあるということだ。


今注目されているところをいくつか挙げておこう(あくまで一部であり、これが全てではない)。


北海道のJewel Kiss
_/_/_/_/_/ Jewel Kiss Official WebSite _/_/_/_/_/


仙台のDorothy Little Happy(ドロシーリトルハッピー
ドロシーリトルハッピー・オフィシャルウェブサイト


愛媛のひめキュンフルーツ缶
ひめキュンフルーツ缶


福岡のLinQ
LinQ 福岡で活動するアイドルグループ 公式サイト


これらの4組はいずれも近々、東京でのワンマンライブが予定されている。そう、すでに注目を集めているのだ。ドロシーについては先日のワンマンライブも大成功しており、もはや爆発寸前GIG状態かもしれない*1


先のムーブメントのときは、「地方アイドルの話題」は、あくまで東京経由で全国で発信されるに過ぎなかった。ゆえに「東京から見た地方」の視点が強調され、東京の人が観光地を見に行くような感覚だったのだろう。そして作り手側もそれ以上の“野心”を持たなかった。だからこそ、「地方アイドルは現地で見てこそ」といった論調が大勢を占め、コアなアイドルファン以上の広がりは見られなかった。Youtubeも無かった時代だから、ファンが広げようとしても限界があった。東京から現地に行って撮って来たビデオを仲間内で上映するくらいが精一杯だった。


だが今回は、活動拠点こそ地方にあるものの、最初から全国区を狙ったクオリティで挑んできている。いや、運営側にとってもはや「東京」「地方」という枠組みは関係ないのかもしれない。本格的に普及したブロードバンド環境と、YouTubeUSTREAMといったサービスのおかげで、全国どこからでも、全国に情報発信が可能になった。また、急速に普及したTwitterなどのソーシャルメディアが口コミを増幅させることで、例え現場で見ている人がわずかでも、その評判が全国的に広がっていく。


このような現象は、アイドル界にも遅ればせながら本格的なパラダイムシフトが起こっていることを示している。


これまでは、アイドルとして活動することイコール上京することであると皆が思い込んでいた。だが、こうして地方に拠点を置くアイドルグループが東京でもリアルに集客し、それがレアケースではなくこのように次々と実例として現れているということは、一時的なブームではなく、「東京原理主義」の終焉を示しているのではないだろうか。
北海道だろうと四国だろうと九州だろうと、訴求力のあるアイドルならばそれはファンに伝わる。ファンがファンに呼びかけることで、その力がさらに増幅される。そこに、東京に集中した既存メディアの姿は無い。わざわざ上京する理由が無くなってしまったのだ。


それどころか、東京のファンが地方に「遠征」することが日常化しつつある。これはまさしく、地方と東京の関係が逆転したものだ。
インターネットが無かった時代、地方のアイドルファンは、雑誌やテレビの情報を頼りに、わずかでも時間と場所を共有したいと、東京のコンサート会場へ日常的に通っていた。これは地方のアイドルファンにとっては当たり前の光景であると同時に、東京のアイドルファンにとっては決して日常ではなかった。なにせ東京ならばいつどこででもイヴェントがあったからだ。
だが、まさしく今、東京のアイドルファンがネットの情報を頼りに地方へアイドルを観に行く状態になりつつある。アイドルたちは地方を拠点に活動し、生活する。ネットの情報がリアルの流れを変え始めたのだ。


東京の情報が必要以上には届かない、東京のマスメディアへの依存が少ない地方だからこそ、このような時代の動きに敏感だったのかもしれない。
客の分母が最も多い東京で活動するアイドル(運営)は、東京のマスメディアに媚びを売って露出を得ても人気が付いてくるわけではないという現実を見つめ直し、地方アイドルに学ぶべきところは学ぶべきだろう。